信州紀行その4

 

 松本の市街地から東に車を走らせ、山道を一気に標高2000mまで登ると、そこが美ヶ原高原。

 あいにくの曇り空の中でしたが、念願の美ヶ原を体験しました。

 

     

 まず訪れたのが、ビーナスラインの北端にある美ヶ原高原美術館。言わずと知れたあのフジサンケイ・グループが、巨額の資金を投じて作った野外美術館です。が、訪れるなり、日野庵主人の耳にはある天の声が……。「美ヶ原に、なんでこんなにたくさんの芸術作品が必要なの?」。ここまで来ると、芸術の意義が見失われているのではと、思われてしまうのでした。ただし、ここで一つ感動したのは、アモーレの鐘の音。フランス生まれのこの鐘は、ファ・ソ・ラの三つの音を持ち、深く荘厳な音色を高原一帯に鳴り響かせるのでした。フランス文学に鐘の音がしばしば重要なモチーフとして登場してくるのも、それが人々の心に響くものだったからに違いありません。

 

 美術館を出て車を山本小屋まで移動させた後、そこから美しの塔までは、牧草地帯の中の遊歩道を歩きます。天空に浮き出たような美ヶ原の地形に、雲を間近に感じながら、しばしの散歩です。高原の草花が風に揺れ、ほんとに気持ちがいい。

  

 

    

 美しの塔は、高原の中央に建てられた美ヶ原のシンボル。それは、一連の風景の中にさりげなくたたずんでいました。

 

 広大な美ヶ原高原のほとんどは、牛たちの放牧地でもあります。この日も草原のいたるところで、牛たちが寝そべったり、草を食んでいました。それにしても、人界を離れた天空の別世界でのびのびと暮らす牛たちが、ちょっと羨ましい気も……。

  

 

     

 美ヶ原を散策した後は、微妙な変化を見せつつ遙かに続く高原の景色を眺めながら、ビーナスラインをひたすら南へ。霧ヶ峰で小休憩した後、今度は白樺湖へ向かいます。

 

 ビーナスラインを東端で下りると、そこに現れるのが白樺湖です。高原の中の小さな湖は、避暑地的な雰囲気をたたえています。ボートを借りて、ゆっくり湖上に漕ぎ出すと、いつしか時間の経つのも忘れてしまうのでした。

  

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