2010年5月20日(木)
口蹄疫に関して

 今年4月より宮崎県内に発生した口蹄疫については、連日の報道によりご存知の通りですが、偶蹄類(ひずめが偶数の動物)に感染し、伝染力の非常に強いウイルス疾患です。平成12年にも国内では92年ぶり(!)に発生しましたが、また宮崎県での発生となり、特に今回は牛、豚など20万頭以上の殺処分だけでなく、重要な種牛の感染へと宮崎県の畜産業は過去最悪の被害となっています。殺処分に関わる獣医師の方々の心的肉体的負担は大変な事と思われ、同じ動物の命を扱うものとしても心が痛みます。一日も早い終息を望みます。

 もし今回の発生が狂犬病だったらどうでしょう。狂犬病ワクチンを接種し登録された犬は殺処分にはなりませんが移動制限は発令されます。狂犬病の発生国はほんの数ヵ国を除くほぼ全世界であり、いつ国内に持ち込まれても不思議ではありません。発生時の蔓延を防ぐには最低でも7割以上の予防接種が必要と言われていますが、近年の予防接種率はやや減少傾向にあるようです。
 
 犬の狂犬病予防接種は法律で定められた義務であり任意ではありません。狂犬病に限らず混合ワクチン、フィラリア、ノミ、ダニなどの予防は他の飼主さんへの最低限のマナーでもあります。一部は人畜共通感染症の原因ともなりますのでご注意下さい。

2010年5月26日(水)
犬種別ドッグフードは必要?
 ホームセンター、ペットショップには犬種別ドッグフードが販売されています。ミニチュアダックス専用、他にチワワ、シーズー、トイプードル、パピヨン、ヨークシャーテリア専用などがあるようです。だいたいよく売れる人気犬種用です。飼主さんからも「○○専用を食べさせています」と言う話をよく聞きます。

 では何が違うのでしょう?結論から言えば、ほとんど違いはありません。「ダックスの椎間板ヘルニアに配慮して○○成分を強化」などうたい文句が書かれていますが、それで病気の予防になったという統計的根拠が存在しません。獣医学的にそのような栄養学も推奨されてもいません。以前に某メーカーの担当者と話をした事がありますが、犬種別に販売した方が他社との差別化になりよく売れるというのが一番の理由らしいです。また飼主さんもその方が安心して購入できるのだそうです。

 そのフードが良い悪いと言う事ではありませんが、犬種別よりも信頼できるメーカーのフードを年齢別に選んで欲しいと思います。陳列棚を見ていると「なぜこのメーカーがペットフードを販売するの?この会社に動物栄養学のノウハウはあるのか?」と首を傾げたくなる事があります。あと一つだけ言える事は安い物にはそれなりの理由があります。
2010年6月8日(火)
麻酔前検査の重要性

 先日は石川県へ麻酔学の講習会に参加してきました。講師はアメリカの獣医学部で研修をして神奈川県にある国内最大級の動物高度医療センターで麻酔科医として勤務してこられた先生ですが、「5歳以上の犬猫に麻酔を行う場合は、少なくとも麻酔前日か当日には血液検査をすべき」との見解でした。犬猫の5歳は人間の36歳に相当します。これ以上の年齢になると加齢に伴う基礎疾患を有する可能性が高くなり始め、麻酔のリスクが上昇するからです。

 当院では若齢でも原則的には麻酔前の検査を推奨しています。なぜなら動物は体調不良を言葉で伝える事が出来ないからです。稀な確率ではありますが、先天性の病気を見過ごしたまま麻酔をかけた場合、生死に関わる恐れがあります。

 また「高齢だから手術は出来ないのですか?」と相談に来られる飼主さんがよくいますが、15歳以上の高齢でも基礎疾患が麻酔に重大な影響(例えば心不全)がなければ手術は可能です。もちろん麻酔前の検査を含めて慎重に行う必要がありますが、過度に恐れる必要はありません。

 アメリカの獣医麻酔学の教科書には次のような言葉が必ず書かれているそうです。「全く安全な麻酔薬は存在しない。存在するのは安全に行う麻酔医だけである。」

2010年7月1日(木)
スタッフ全員で臨床栄養学コースを修了しました
スタッフ全員で合格しました

 当院では昨年院内セミナーを開催しました。ロイヤルカナン主催の臨床栄養学コースです。10回に及ぶ講習会を1年間に渡り受講しました。先日2時間の認定試験が行われ、私を含め受講したスタッフ全員が無事合格となりましたので、賞状を掲げて記念撮影をいたしました。

講習会の内容は以下の通りです

1.基礎栄養学(バランスの取れた食事)
2.肥満
3.下部尿路疾患
4.腎疾患
5.肝疾患
6.皮膚疾患
7.消化器疾患
8.関節疾患
9.心疾患
10.糖尿病

 スタッフ全員が「犬猫の栄養管理アドバイザー」として健康な犬猫や、各疾患に必要な療法食を飼主様にアドバイスし食餌管理をして頂くことで、より適切な健康管理ができるものと考えています。
 
 犬猫の栄養に関する疑問点はぜひご相談下さい。また今回の講習会を担当して下さいましたロイヤルカナンの先生に深謝いたします。

臨床栄養学コース修了
2010年7月4日(日)
軽自動車での交通事故が続きます
尿路造影レントゲン検査で造影剤が腹腔内に漏出しています

 飼主さんが自分の犬に交通事故を起こしてしまったケースが相次いでいます。

 自分の軽自動車で寝ていたワンちゃんを踏んでしまいました。お腹をひどく痛がり診察室で暴れています。鎮痛剤を注射してから尿道カテーテルを挿入しての造影レントゲン検査で膀胱破裂がありました。このままでは腹腔内に尿が漏れて1日で尿毒症と高カリウム血症で死に至るので緊急手術です。同時に行った胸腹部CT検査では他に異常はありませんでした。

 次に飼主さんの軽トラから落ちてしまったワンちゃんは全身挫傷と頭部外傷によるショック状態でした。また急性腎不全になりかけていましたのでICU装置内で酸素投与と急速点滴を処置しました。

 いずれも無事に退院してくれましたが、人間側のちょっとした不注意が原因です。どうかお気を付け下さい。以前も狂犬病集合注射の会場で荷台から落ちたワンちゃんを目撃しました。軽トラックの説明書に荷台へ犬を乗せないで下さいとメーカーに書いて欲しいものです。

これは犬を運ぶための車ではありません
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