先日は石川県へ麻酔学の講習会に参加してきました。講師はアメリカの獣医学部で研修をして神奈川県にある国内最大級の動物高度医療センターで麻酔科医として勤務してこられた先生ですが、「5歳以上の犬猫に麻酔を行う場合は、少なくとも麻酔前日か当日には血液検査をすべき」との見解でした。犬猫の5歳は人間の36歳に相当します。これ以上の年齢になると加齢に伴う基礎疾患を有する可能性が高くなり始め、麻酔のリスクが上昇するからです。
当院では若齢でも原則的には麻酔前の検査を推奨しています。なぜなら動物は体調不良を言葉で伝える事が出来ないからです。稀な確率ではありますが、先天性の病気を見過ごしたまま麻酔をかけた場合、生死に関わる恐れがあります。
また「高齢だから手術は出来ないのですか?」と相談に来られる飼主さんがよくいますが、15歳以上の高齢でも基礎疾患が麻酔に重大な影響(例えば心不全)がなければ手術は可能です。もちろん麻酔前の検査を含めて慎重に行う必要がありますが、過度に恐れる必要はありません。
アメリカの獣医麻酔学の教科書には次のような言葉が必ず書かれているそうです。「全く安全な麻酔薬は存在しない。存在するのは安全に行う麻酔医だけである。」
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