日野庵主人の隠れ部屋
隠れ部屋へ迷い込んだのは誰?
『武生高校国語科俳句集』(1997.6)より
○青魚 自選十一句
雲間から覗く碧落(へきらく)春浅し
山の気を集むるごとく蕨(わらび)萌ゆ
淋しさを知らぬそぶりの二輪草
夜叉の棲む池に手向けの若葉かな
無花果のやはらかき実に母想ふ
畔道に精霊一つ彼岸花
白菊や満月光に凛々と
空高し晴れ着のにぎる千歳飴
たわわなる柿もぐ人もなき屋敷塀
片時雨彼方の虹を眺めをり
雪を呑み左義長の焔(ほむら)舞ひあがり
その後の俳句
柏餅頬ばる空の蒼さかな
宵桜ぼんぼりごとの賑わしさ
中秋や月のみちびく家路かな
帰郷せし子らも総出の田植えかな
亡命の幼子哀し母の日の朝
紫陽花に見送られ行く朝の径(みち)
木洩れ日に散るをためらう山桜かな
梅雨空に線香の香のかぐわしく
何かしら終わりを告げる落ち葉かな (2013.9.27)